特別企画

Connecting People and Land

ツール・ド・東北が生んだ「人と人、土地と人とのつながり」 Vol.1

道端カレン〈ツール・ド・東北 2014 広報大使〉 山田淳〈河北新報社 営業局企画事業部 部長〉 須永浩一〈ヤフー 復興支援室 室長〉

「ツール・ド・東北」をきっかけに、人と人、土地と人との交流を生み出す一連のプロジェクトに迫る特別企画。第一回は、2013年度を振り返りつつ、開催への思いを伺いました。
(2014.08.20 掲載) text by Nao Niimi(KAI-YOU) photography by Shunsuke Mizukami

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対談|未来への扉をひらく Vol.15 メインビジュアル1

ツール・ド・東北とは

東日本大震災復興支援の一環として2013年に始まった、河北新報社とヤフーが主催する自転車イベント「ツール・ド・東北」。最低でも10年間続けるという目標を掲げてスタートした本大会の2回目となる2014年は、参加人数の倍増やコースの延長など、日本最大級の規模に拡大して開催される。ライダーだけでなく、大会の運営を支えるために各地から集まる「ツール・ド・東北 クルー」(ボランティア)や「民泊」(参加者の宿泊施設として民家を提供)に協力する地元の方々など、多様な参加者が大会を作り上げている。

「応援してたら、応援されてた」

道端私は昨年の「ツール・ド・東北」では、最長コースの160kmに参加しました。コースを走っているときに、仮設住宅の前で、おじいちゃん、おばあちゃんが旗を振って応援してくださったのがとにかくうれしかったです。

須永道端さんご自身がこれまで参加された自転車競技の中でも、160kmは最長記録だったとうがかいました。なぜ「ツール・ド・東北」で挑戦しようとお考えになったのですか?

道端今、東北は復興に向かって頑張っています。だから私自身も、東北でこれまでにない長い距離に挑戦してみたいと思いました。同じステージに立っていることにはなりませんが、自分も必死に努力することで、何か少しでも気持ちのうえで皆さんに近付くことができないかなと。言葉にするのは難しいのですが。

須永道端さんのお気持ちは、主催としてとてもうれしいです。

道端ありがとうございます。でも、160kmは本当に大変でした。苦しくて、一緒にずっと走ってくれた方に対して途中で無言になってしまう時間もありました(笑)。

ですが、立ち寄ったエイドステーションで、地元の方々が「いらっしゃい!」とライダーをフレンドリーに歓迎してくれたり、漁師の方が「俺が作ったつみれだ」と自慢げに料理を振る舞ってくださったりして、皆さんとても元気なんですよ。しかも、いただいた東北の海の幸が本当においしい! 元気をもらったおかげで、何とか完走できました。

コースを走って感じた地元の方々の情熱は、今でもすごく印象に残っています。正直に言って、「ツール・ド・東北」に参加する前は、被災地はもっと沈んだ雰囲気なのかと思っていました。本当に東京から自転車を乗りに来てもいいのだろうかと遠慮する部分もありましたが、皆さんの強さに触れて、応援に来たはずの私が、地元の人や東北に逆に応援されました。

山田「ツール・ド・東北」にエントリーしてくれる人は、少しでも東北の人たちの力になればという思いで参加されるのでしょうけれども、不思議なもので、何か一つのことを目指そうとしたとき、支える方も支えられる方も一体になって、自然とお互いに支え合うことになるんですよね。

「ツール・ド・東北」も、開催地自治体や警察など、関係機関の方々によるコースの環境整備や管理などのご支援、ご協力をはじめ、地元住民の方々のご理解がなければ実現できないイベントです。

そうした支えてくれている地元の方々の参加者へのおもてなしは、東北に来てくれて「ありがとう」の感謝の気持ちが、被災地の応援に来たつもりの参加者を逆に「がんばれ!」と応援することにつながっていく。東日本大震災の時にも、被災地ではさまざまなところで助け合い、譲り合いが起きていました。支え合おうとするのは、日本人特有の道徳心、美徳ですよね。自転車大会を主催する立場として、それを強く感じました。

道端前回の大会に参加してわかったことは、ただ旅行で被災地に足を運ぶよりも、現地の人や東北という場所と深く触れ合う機会がたくさんあったことでした。私がエイドステーションで食事を振る舞っていただいたときもそうでしたし、ましてや民泊を利用された人は寝食を共にされたわけですよね。

地元の方は、とにかく来てもらうことがうれしいとおっしゃっていました。遊びに来てほしい、会いに来てほしい──具体的な復興支援事業として何かを作り上げていくことも大事ですが、人の優しさに触れたいという気持ちも大事だと思います。

そんな気持ちを理解できているかどうかはわかりませんが、つらい思いをしている被災地の人たちを少しでも身近に感じて、押しつけや同情じゃなく、ひとつの大会を通して支え合って優しい気持ちを与え合える。「ツール・ド・東北」はそういうイベントなのだなと。

ツール・ド・東北が生んだ「人と人、土地と人とのつながり」Vol.1_1

ツール・ド・東北が生んだ「人と人、土地と人とのつながり」Vol.1_2

須永「ツール・ド・東北」はもともと、ヤフーと河北新報社さんだけで取り仕切って動かそうとは考えていませんでした。みんなが協力してようやく形になるような、そんなプロジェクトにしたかったのです。

僕も最初は、「被災地でイベントを行ってもいいのだろうか?」という気持ちもありました。お亡くなりになった方や行方不明の方も大勢いらっしゃるがれきだらけの地域を、被災しなかった地域に住む人が自転車で走ることが、本当に現地の人のためになるのか、わからなくなったことがあります。

そのときに河北新報社さんが、何を言っているんだと激励してくださったのです。いつまで暗いままでいるんだ。このまま何もしなければ、一生かわいそうな土地のままで終わってしまう。いろいろな意見があるだろうけれど、行動を起こさないと何も始まらない、と。現地の声を拾い上げてきた河北新報社さんの言葉だからこそ、力強かったです。

山田東日本大震災で失ったものはたくさんあります。けれども、復興支援を通じて得られた人と人とのつながりのように、震災後に生まれたもの、再発見したものもたくさんあります。

「ツール・ド・東北」は、参加する人にとっても地元の人にとっても、誰かのために一生懸命になれる自分を発見する機会にもなっている。そして、全国から集まって被災地を見てもらう機会を作り、その体験を周囲に伝えてもらうことによって、東日本大震災を風化させないという役割もある。明るい未来の可能性を切り開けたと思っています。

須永参加者の応募総数が増えている点も、賛同してくれる方が増えていることの証拠ですね。前回の1500人から拡大して今年は3000人の参加枠を用意しましたが、応募総数は前回を上回る6000人に迫る数字でした。

道端会社や団体に所属していれば違うのかもしれませんが、東北のために何かをしたいと一個人が行動を起こすことは大変で、何かのきっかけが必要です。東日本大震災の発生直後から、物資を持って被災地に駆け付けた人もいますが、そこまでの行動力がない、何をすればいいかわからない人にとって、東北の方々と触れ合う機会を作ってくれている「ツール・ド・東北」は心強いですよ。

須永自転車が好きで参加して、それが結果的に復興や現地の人たちの力になっていく。義務感ではなくお互い自分のやりたいこと、やってほしいことをうまくリンクさせることができたと思っています。

■特集|未来への扉をひらく

  1. What is “Links for Good”?
  2. 01.MISIA 七つの海に響く歌
  3. 02.佐藤大吾 みんなの気づきが日本を変える
  4. 03.米良はるか 声援が、明日への一歩を踏み出す力に
  5. 04.駒崎弘樹 すべての親子が笑って暮らせる社会を
  6. 05.伊勢谷友介 美しい成長
  7. 06.有森裕子 他人を喜ばせる力は、自分を喜ばせる力に
  8. 07.白木夏子 エシカルジュエリーで笑顔を
  9. 08.中村俊裕 テクノロジーがラストマイルに笑顔を届ける
  10. 09.山崎亮 誰がコミュニティをデザインするのか?
  11. 10.枝廣淳子 しなやかで、持続可能な社会
  12. 11.野口健 山が教えてくれた、知ることの本質
  13. 12.森山誉恵 子どもたちにツケを払わせない社会
  14. 13.ハリス鈴木絵美 一人ひとりの声は、インターネットに乗って社会を変える力に
  15. 14.小暮真久 誰かのためになることを面白がれる人に
  16. 15.道端カレン、山田淳「人と人、土地と人とのつながり」 Vol.1
  17. 16.北村孝之、高橋邦治、佐藤渉、立花丈美「人と人、土地と人とのつながり」 Vol.2
  18. 17.大会参加者レポート「人と人、土地と人とのつながり」 Vol.3
  19. 18.髙井康行、服部亮市「寄付の行方」Vol.1
  20. 19.髙井康行、服部亮市「寄付の行方」Vol.2
  21. 20.ジョルジェ・マキッチ「寄付の行方」Vol.3
  22. 21.「女性が働きやすい会社のつくり方」Vol.1
  23. 22.「3.11を機に問い直す、ヤフーのBCPとは?」
  24. 23.吉岡マコ「女性が働きやすい会社のつくり方」Vol.2
  25. 24.子どもたちの未来

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