特集

3.11を機に問い直す、ヤフーのBCPとは?

未曽有の災害となった東日本大震災をへて、ヤフーではBCP(事業継続計画)を捉え直し本格始動させています。東日本大震災当時の対応を振り返りながら、これから起こりうる災害も視野に入れ、課題解決エンジンである「Yahoo! JAPAN」として、どのような意識のもと取り組みを進めているのでしょうか。
(2015.03.11 掲載) text by Nao Niimi(KAI-YOU)& Hiroya Ishikawa photography by Shunsuke Mizukami & Tada

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左:2011年3月11日のYahoo! JAPANトップページ/右上、右下:東京本社裏の公園で避難している社員

2011年3月11日、その時ヤフーは?

奈須川震災当日、私はその日の「Yahoo! JAPAN」トップページ(以下トップページ)に掲載する「Yahoo!ニュース トピックス」の編成を決めるデスク担当でした。地震が発生したのは、ランチを食べ終わって数十分たったころ。東京本社17階でメンバーが作成したトピックスを出し分けていく作業の最中に大きな揺れが発生しました。当時から、地震や津波のような災害には即座に対応しようという方針がありました。訓練も繰り返して備えてはいましたが、かなり大きな揺れが長時間続いたので、中腰の状態で手を震わせながら作業していた記憶があります。

当時の記録を見ると地震が発生した時刻は14時46分で、地震関連で最初の情報をアップした時刻は14時50分。この初動の時点では、まだ記事の配信がありませんので、「Yahoo!天気・災害」の地震情報を載せました。その後、マスコミ各社から地震観測の記事が配信されたので差し替える作業をしました。そのあたりまでは社内で対応していましたが、その後ビルで火災が発生したという館内放送があり、避難するよう指示が出ました。このため、メンバーに外で更新できるようノートパソコンを持ちだして避難するよう伝えていると、ちょうど津波情報が入ってきました。津波は警戒を強く呼びかけなければならない情報です。ビルから避難しなければならない状況でしたが、津波の情報を「トップページ」に掲出するまで粘ってから、階段を下りてビルの外へと避難しました。

どうやってニュースを更新するのか?

奈須川ビルから避難するにあたり、当時大阪オフィスにニュースの更新ができるスタッフが2人いたので続きの作業をお願いしました。ところが実は大阪も揺れていて、しばらくしたらオフィスのビルにも避難指示が出てしまった。それで「ニュースの更新を誰がやるんだ?」という状況に直面したのです。

3.11を機に問い直す、ヤフーのBCPとは?

東京本社裏の公園で避難している社員

当時から外でも更新できるように持ち出し用のノートパソコンや、インターネットに接続するためのルーターなどを用意していたのですが、この時は残念ながら機能しませんでした。アクセスコードを持った人が夜間などに自宅から更新できるようになっているのですが、まさか職場自体が機能しなくなるとは思っていなかったからです。避難先となった本社裏の公園には、更新ツールにアクセスできるメンバーもいたはずですが、人が多すぎて見つけられません。このため、しばらく「トップページ」のニュースを更新できない状況が続きました。

エンジニアなど一部みつかったメンバーで「なんとかしないといけない」とノートパソコンを開いてはみたものの、セキュリティが厳しく「あれもダメこれもダメ……」とアクセスできない。そこで、会社の近所に住んでいるメンバーにすぐ帰宅してもらい、自宅からの更新作業をお願いしました。

結果的に避難先の公園では、ニュースの更新が1本もできませんでした。あれだけ大変な時に30分も何もできなかったのです。自宅に戻ったメンバーが作業できたのは幸いでしたが、人手が十分に足りていたとは言えません。

私がオフィスに戻れたのは16時過ぎでした。ビルの入り口にいた警備員に、ビル内の状況を確認してもらい、いち早く中に入れてもらうことができました。しかし、オフィスは17階です。あのときほど階段が長く感じたことはありませんでした。

情報をいち早くユーザーに

奈須川その後、震災に関する比較的詳しい情報が入ってきたのは夜になってからです。それまでは被害規模がわからないのが一番の不安でした。でも、ユーザーの方は私たち以上に不安を感じていたはずです。それをなるべく解消してあげたいと思っても、時間がたてばたつほど、想像以上に被害が拡大していくばかりでした。ですので、とにかく最新の情報をいち早くユーザーに届けることしか考えてなかったですね。

3.11を機に問い直す、ヤフーのBCPとは?

奈須川信幸

「Yahoo!ニュース」では、普段ニュースが更新されると見出しに「NEW!」というアイコンが付くんですが、あれだけの規模の災害時にはこのアイコンのデザインはそぐわないと判断して削除しました。また「トップページ」に載る8本のニュース(「Yahoo!ニュース トピックス」)は、普段上から順に、内容の堅いものから柔らかいエンタメ系のニュースが並ぶグラデーションをつけています。しかし、エンタメ系のニュースより伝えるべき情報が山ほどあると判断して、8本すべてを地震関連のニュースを並べました。

東日本大震災を通じ、さまざまな課題を突き付けられました。セキュリティを高めておくことは非常に重要ですが、それが災いして、いざというときにツールにアクセスできず更新作業が滞ってしまいました。避難先の公園からニュースを更新するためのツールに入ろうとしても、権限やアクセスコードの不備など、いろいろなところでひっかかってしまったのです。非常時の対応は用意していたのに、きちんと機能するかどうかの検証ができていなかった。それがのちにBCP拠点として北九州編集室を作るきっかけになりました。

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