「いま必要な支援を届けたい」
社内外で連携し熊本を支援

根木佳織と妹尾正仁の写真

ヤフーはA-PADジャパンらとともに熊本で支援活動を展開した

4月14日、16日の二度にわたり、熊本は大きな地震に見舞われた。ヤフーは熊本地震発生直後から、関連情報の発信を続けたほか、Yahoo!基金による緊急支援金を受け付け、これまでに寄付金約5億円を集めた。21日には社員6人が現地入りし、アジアパシフィックアライアンス・ジャパン(A-PADジャパン)らと連携して支援活動を開始。ヤフーは現地に向き合い、本当に必要な支援を届けることを目指している。

文=吉田広子(「オルタナ」副編集長) 写真=安田美紀 妹尾正仁

根木佳織の写真

A-PADジャパン事務局長の根木佳織さん。人道支援で15年以上のキャリアを持つ

「二度の大きな地震に加え、余震が相次いだ。通常は避難所に来る避難者の数は発災直後がピークで徐々に減っていくが、今回はどんどん増えていった。熊本地震特有だった」

こう振り返るのは、A-PADジャパン事務局長の根木佳織さんだ。

続く余震と緊急地震速報のアラーム――。人々は恐怖心で避難所に集まってくる。車中泊など屋外避難も多かった。「避難者が増えると、状況把握が難しくなる。避難者の属性や人数さえも計れない状況が続いた」(根木さん)という。

A-PADジャパンと姉妹団体であるピースウィンズ・ジャパン(PWJ)で結成する災害救助犬・レスキューチームは地震発生の翌朝、広島から熊本県益城町に到着。行方不明者の捜索活動を始めた。九州エリアの拠点として、2015年12月に佐賀事務所を構えていたこともあり、根木さんを含む支援チームもすぐに駆け付けた。

妹尾正仁の写真

ヤフー株式会社社会貢献推進室室長の妹尾正仁。支援を必要としている現状を知り、熊本入りを即断した

緊急時だからこそ現地に足を運ぶ

「現地に行かなければ分からないことがある。とにかくいま必要な支援を行いたいという思いで、熊本入りを決めた」

ヤフー株式会社社会貢献推進室室長の妹尾正仁は、こう語る。災害発生から間もない緊急時に現地入りするのは、ヤフーにとって初めての経験だった。

どのような支援が必要か、ヤフーは何ができるのか――。4月21日、現地に向かったのは妹尾をはじめ社員6人だ。社会貢献推進室のほか、記者経験のあるYahoo!ニュースの担当者、Yahoo!ショッピングの営業担当者、Yahoo!防災速報の担当者、顧客対応部門のマネージャーなど、異なる部門から集まった。

ヤフー株式会社社会貢献推進室東北共創チームの松本裕也は、「被災地に向かって車で走っていたら、普通の街並みの中に、突然倒壊した家々が現れた。報道で見ていたよりも、被害の大きいエリア、小さいエリアの差をはっきりと感じた」と、当時の状況を説明する。

倒壊した家屋の写真

倒壊した家屋。被災地を車で走っていると、地域による被害の差を感じた

避難所情報をひたすらマッピング

福岡空港から熊本に入ったヤフー社員6人は、益城町総合体育館でA-PADジャパン、PWJ、シビックフォースのチームと合流した。すでに現地入りしていた彼らとは、普段からYahoo!ネット募金で連携していたこともあり、現地でもすぐに協力体制が整った。

当時、益城町などの被害の大きかった地域では、人員不足と物流の問題で物資が適切に配布することが難しい状況だった。さらに指定された避難所のほか、自然発生的な「避難場所」が各地に散在し、被災者が置かれている状況の全体像がつかみにくい状態だった。

ヤフーとA-PADジャパンらの合同チームは、物資を自主「避難場所」にいかに効率よく網羅的に物資を届けられるかを検討した。初めは手元の情報を基に各施設を回ったが、効率性に課題があった。そこで、東京のヤフー本社の協力も得て、Yahoo!ロコの施設情報を基に情報を整理し、1件1件電話をかけて最新の状況を確認。そのうえでYahoo!地図を使って独自の避難場所マップを作成した。その間、わずか3時間。それを使って22日、23日にかけてトラック3台で15カ所を回った。

物資を積み込んだトラックの写真

物資を積み込んだトラック。当時は衣類や下着を必要とする人が多かったという

松本は「有事という逼迫した状況ではあったが、『営業アタックリスト』を作るような作業は仕事柄慣れていたところもあった」と話す。顧客対応部門のマネージャーはすぐに「電話対応マニュアル」をつくり、無駄のない情報収集に努めた。

根木さんは、「支援を始めて一週間、知らない間に私たちNGOも疲れがたまっていた。ヤフーの皆さんは気力、体力、何より『あきらめない気持ち』があり、素晴らしい働きでとても助かった。企業の底力を感じた」と感謝を伝える。

テレビ会議の様子の写真

ヤフー株式会社社会貢献推進室東北共創チームの松本裕也。熊本には約1カ月間滞在した。取材にはテレビ会議で参加

災害対応の仕組みづくりへ

時間が経過するにつれて、物流も改善され、緊急度も下がってくる。支援ニーズが多様化するなかで、次は何ができるのか。

「オンライン寄付など、ヤフーはITを使って広く力を集めるのが得意。現地の生の声に応えて始まった『LOHACO応援ギフト便』もその一つ」(妹尾)

ヤフーと子会社のアスクルは4月28日、熊本県内の有志による「熊本県支援チーム」と協働し、被災者のニーズに沿った生活物資を届ける「LOHACO応援ギフト便」を開始した。

熊本支援チームが必要な生活物資をアスクルに伝え、「LOHACO応援ギフト便」のウェブサイトに掲載。応援者(モノによる寄付者)を募り、支援品を避難場所に届ける仕組みだ。5月末までに熊本県内17カ所に2637商品(セット)を届けた。現在は現地で活動しているNPOからの要望を受け付けている。

東北で復興支援に取り組む松本は「今後は熊本の産業復興や観光地の支援などにも取り組んでいきたい。東日本大震災の復興支援で培った経験やノウハウを生かせる部分もある」と話す。ヤフーは2012年7月、宮城県石巻市に「ヤフー石巻復興ベース」をオープンし、復興支援に取り組んできた。

妹尾は「災害はいつ起こるか分からない。次の災害に備えて、最小限の被害ですむように、いまのうちから情報共有の仕組みや行政への働きかけを進めていきたい」と語った。

根木佳織

アジアパシフィックアライアンス・ジャパン(A-PADジャパン)事務局長、ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)統括責任者補佐、シビックフォース理事・事務局長。アフガニスタンやイラクなどでの海外での人道支援活動に取り組み、2009年より国内災害対応に従事。

根木佳織の顔写真

妹尾正仁

ヤフー株式会社コーポレート統括本部コーポレートコミュニケーション本部社会貢献推進室室長 

2009年法律事務所で弁護士を務める。

2012年にヤフー株式会社入社。M&Aや経営戦略などに携わる。

2015年から、社長室コーポレートコミュニケーション本部 社会貢献推進室の室長となる。

妹尾正仁の顔写真

松本裕也

ヤフー株式会社コーポレート統括本部コーポレートコミュニケーション本部社会貢献推進室東北共創チーム

2009年ヤフー株式会社に入社。3年間広告営業として従事。

その後学生時代からNPOの活動に関わっている経験を活かし社会貢献系サービスの担当者となる。

Yahoo!基金事務局、Yahoo!ネット募金、Yahoo!ボランティアの企画担当を経て現職。

※肩書き、部署名は掲載時のものです。

松本裕也の顔写真

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