インターネットは都会と地方の壁をなくす
「eコマース革命」で地方に眠る良いモノを全国へ

みかんの生産農家の写真

愛媛県西宇和産の「川上みかん」は、陽光豊富な恵まれた自然環境のなかで、100年以上にわたって培われてきた農家の技術で生産されている

「Yahoo!ショッピング」は、2013年の「eコマース革命」で出店料無料に踏み切って以来、急速にストア数を伸ばし、31万店舗を達成した(2015年6月末)。社員が直接地方の生産者や経営者のもとまで900回近く出向き、地方に眠る逸品の商品化を後押ししてきた。無料化によって固定での出店コストがかからないため、地方の旬なもの、その時期しか採れないものなど季節限定の商品を売りやすくなったことも出店の動機付けとなっている。全国に販路を拡大できるeコマースは、地方活性化の起爆剤になる可能性を秘めている。

文=瀬戸内千代(「オルタナ」編集委員)

白山さんの説明会の写真

白山は約2年間で900カ所近くを訪問し、説明会を開いてきた

2013年10月、ヤフーは「Yahoo!ショッピング」のストア出店料と売上ロイヤルティを完全に無料化する「eコマース革命」を発表した。また、個人でも出店可能とし、新しいビジネスチャンスを創出させる方針に転換した。

この革命で「売り手ファースト」な戦略を徹底した結果、地方在住の生産者や経営者にも、より参加しやすい仕組みが整った。ところが、彼らの多くはeコマースを商売として活用できていない。

「無料化に伴い大変多くの方にご出店いただき、ストア数は31万店舗に達し、商品点数は1.7億まで激増しました。それでも、地方での知名度はゼロに近い。出店手続きも非常に簡単になりましたが、対面で話さなければ出店するきっかけがつかめなかった方が大勢います。ですから、全国津々浦々まで出かけることが大切なのです」

こう語るのは、ショッピングカンパニー 営業本部 セールスプロモーション部リーダーの白山達也だ。

白山は、講師役として全国900カ所以上を巡り、特に地方でメリットが大きいと期待されるeコマースの価値を語ってきた。

自社サービスの紹介だけにとどまらず、eコマース全般にチャレンジする意義を語るため、各地の自治体や商工会議所のリクエストに応えて、小さな町にも出かけていく。

「人口減少が進む日本で、過疎化する地方が生き残るには、経済の循環が必要と考えています。eコマースは、その有効な手段の一つだと確信しています」

しらす干しの様子の写真

松尾社長は、ちりめんから手作業で取り除かれ有償で廃棄されている小エビの存在を知り、その場で適量の小エビを敢えて入れる「えびちりめん」を考案。色彩が美しく風味も良いため、売れ筋商品となった

消費者の声がやりがいや意欲に

東京や大阪などの都市部に比べ、まだ地方の出店数は少ないが、確実に増えてきた手ごたえはある。そんな中で積極的にeコマースを活用して販路を全国に広げ、しっかり利益を上げる成功例も出てきた。

その一つが、有限会社ホロニックフーズ(福岡県筑紫野市)だ。「Yahoo!ショッピング」に「くいしんぼうドットコム」というストアを出店し、「天日干し 天然海老ちりめん」や「博多流『 鯛(たい)茶漬け』」などヒット商品を生み出している。

松尾正己社長は、「ストア出店料などが無料だとコスト管理がシンプルで、販売計画が立てやすく、利益計算もしやすくなりました。そこで浮いたコストや労力をプロモーションに注げます」と、無料化のメリットを語る。

「eコマース革命」でユーザー重視の姿勢を打ち出したヤフーが、福岡県に専門部署を置いたことも、松尾社長の心を動かした。

「やはり顔と顔を見合わせて話すのは違いますね。メールや電話よりも、より理解できますし、非常に期待しています」

同社のモットーは、「地域に眠っている良いモノを全国に広める」こと。例えば、「くいしんぼうドットコム」で販売している愛媛県西宇和産の「川上みかん」は、通常の流通には乗りにくい2Sサイズの「小蜜柑(こみかん)」を販売している。

「味や品質はM・Lサイズに全く劣らない。むしろ凝縮されたおいしさがある。こうした今まで知られていなかったモノを全国に届けることが当社の使命です」(松尾社長)

取引先の農家は、ホロニックフーズへ生産物を卸すことを機に、値決めなどに意見が言えることを喜んでいると教えてくれた。また消費者の声が生産者にフィードバックされることで、やりがいや意欲を新たにしているという。

地方で活躍する人財の育成が課題

日本のeコマースは、「夜明け直後の成長市場」だ。前年同期比で約120パーセントも伸び、現在10兆円の市場規模は、近い将来さらに倍増する見込みである。

白山は、「多くの方に、この成長市場で勝負をかけていただきたい。でも商売の3要素のうち、魅力的な『モノ』があって、無料化で『カネ』の制約を外しても、地方にはeコマースができる『ヒト』が足りない。人財育成が課題です」と語る。

地方の活性化は、国が抱える課題でもある。「インターネットの力で人々や社会の課題を解決する」ことを目指すヤフーは、全国の各種学校と組んで「インターネットを商売として活用する授業」を準備中だ。

eコマースには欠かせないサイトの構築・デザインができる若者が地方に増え、地元商店が出店するようになると、地方にお金が落ちるようになる。さらに生産者のもとで販売や加工を担う仕事が生まれれば、都市部に流出しがちな働き手も地方に定着していくだろう。

「全国各地でeコマースが当たり前になれば、日本各地が活性化すると思います。いまやスマートフォンさえあれば、誰でも簡単にお店を開ける時代。これまで都会が主導して受けていたインターネットの恩恵を、地方にもどんどん広めていきたい。都市部や地方など関係なく、面白いモノを売っている人が注目される売り場が作れれば最高です」(白山)

松尾正己

有限会社ホロニックフーズ 代表取締役社長

都銀系不動産会社勤務ののち、1989年4月に不動産コンサルティングを主業務とした株式会社ホロニックを立ち上げる。食品卸部門を分社化し、2002年4月に有限会社ホロニックフーズ代表取締役社長に就任。2008年3月、通信販売業務立ち上げに伴い、株式会社フーズラボを設立し代表を務める。

松尾正己の顔写真

白山達也

ヤフー株式会社 ショッピングカンパニー 営業本部 セールスプロモーション部 リーダー

2007年ヤフー株式会社に入社。「Yahoo!宅配」のサービス企画などをへて、2013年のeコマース革命を機に現職を任命され、伝道師として全国行脚を続ける。今秋より全国の学校でeコマースを実践的に学べる授業にて講師をつとめる。

※肩書き、部署名は掲載時のものです。

白山達也の顔写真

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