呼吸するデータセンターとは?
ヤフーの環境への取り組み

サーバルームに立つ秋山潤と佐々木聡の写真

ヤフー株式会社システム統括本部 サイトオペレーション本部 インフラ技術2部 DC運用技術 リーダーの秋山潤(左)とIDCフロンティア カスタマーサービス本部 ファシリティエンジニアリング部の佐々木聡
(背景写真:木田勝久/FOTOTECA)

快適なインターネット環境は、膨大なデータをやり取りする「データセンター」が支えている。そして、ヤフーの年間消費電力量のほとんどを占めるのがデータセンターだ。ヤフーは国内9カ所(2016年2月現在)に保有するデータセンターで、省エネを通じて環境負荷を減らす取り組みを行っている。中でも白河データセンター(福島県白河市)は、サーバーから発生する熱を自然の力で冷やす仕組みを導入。消費電力の削減に貢献している。

文=斉藤円華(「オルタナ」編集委員) 写真=福地波宇郎

空調システムイメージ図

空調システムイメージ図。サーバールームに引きこまれた冷たい外気は、暖められて「吹き抜け」を通って建屋上層に抜け、最後に屋上のチムニー(排出口)から外へ出る仕組み

1つのデータセンターには、サーバーが数千から数万台も設置されている。サーバーはパソコンと同様にCPUやメモリ、ハードディスク等を搭載し、一時も休むことなくデータの保存や配信などの処理を行う。その際にサーバーが電力を消費して生じる排熱は、データセンター全体で膨大な量に上る。

「ヤフーの年間消費電力量は、一般家庭のおよそ4万世帯分に相当する約2億kWh(キロワットアワー)に上ります。このほとんどがデータセンターでの使用によるもので、データセンターで消費された電気は最終的には全て熱に変わります」

そう話すのは、ヤフーが保有するデータセンターの運営を担うグループ会社、IDCフロンティア カスタマーサービス本部 ファシリティエンジニアリング部の佐々木聡だ。

IDCフロンティアの佐々木の写真

データセンターの運営を担うIDCフロンティアの佐々木

サーバーは精密な電子機器であり、高温や低温、また多湿や乾燥などの極端な環境に弱い。サーバーを常時最適に稼働させるには、気温や湿度を一定に保つ必要がある。従来のデータセンターでは、専用の空調機器でサーバーを冷やすのが一般的だ。

一方、2012年10月に稼働を始めた福島県にある白河データセンターでは、年間を通して冷涼な気候を活かして「外気空調」方式を採用。涼しい外気をデータセンターに直接引き込みサーバーを冷やす。建物の骨格を「やぐら状」に組み、サーバーの排熱として暖められた空気が自然の力で建屋内の「吹き抜け」を上がり、屋上から排気される造りとなっている。

これにより年間の空調負荷の約9割を自然の力で冷却。サーバールーム内は、サーバーに最適だと言われている温湿度範囲に保たれ、空調機器を動かすのはほとんど夏場だけで済むという。自然の力で冷やすのが同施設の最大の特徴だ。「私たちは、自然の力を利用した白河データセンターを、『呼吸するデータセンター』とも呼んでいます」(佐々木)

ヤフーの秋山の写真

データセンターの運用を担当するヤフーの秋山

消費電力を3分の2に削減

データセンターの効率をあらわす指標に「PUE」がある。データセンター全体で消費した電力量を、データ処理に要するサーバーなどのIT機器が消費した電力量で割った数値だ。数値が1に近づくほど、データ処理以外に必要な電力消費が少なく効率が高いことを意味する。通常データセンター内では、データ処理に次いで多くの電気を使うのが空調だ。

日本のデータセンターの平均PUEは1.74なのに対して、白河データセンターは1.2以下を達成。従来と比べて消費電力量を3分の2に抑えることに成功した。このほか、同施設の管理棟屋上には発電出力32kWhのソーラーパネルが設置され、館内照明などに利用。電力消費の削減に貢献している。

また、ヤフーの従来型のデータセンターでも「サーバーを冷やす空気の流れを、サーバー台数などによって最適化しています」(佐々木)など、きめ細かい方法でエネルギー消費の低減を図っている。

立地場所に福島県白河市が選ばれたのは涼しい気候に加え、首都圏から近く、さらに大きな地震の発生確率が低いことが挙げられる。白河データセンターは東日本大震災直後に着工したが、震災による建設工事への影響はほとんどなかった。ヤフーはデータセンターを東京、大阪、北九州、白河に分散配置している。こうすることで自然災害や電力不足、データ障害などに備え、万一の際にも素早く復旧する態勢を整えている。

白河データセンターの外観写真

白河データセンターでは、建物外壁から外気を取り込んでいる

重要度を増すデータセンター

インターネットの普及とともに誕生したデータセンターは、インターネットで扱うデータ量が飛躍的に増えるに従い重要度を増している。ヤフーが保有するサーバーの台数も過去10年で4倍に増加し、数万台に達している。

ヤフー株式会社 システム統括本部サイトオペレーション本部でデータセンターの運用を担当しているリーダーの秋山潤は「たとえ1分や1秒でもデータ障害が発生すれば、インターネット利用に深刻な影響が出ます。ヤフーは自社でデータセンターを持つことで、需要が増加してもスケールアウト(サーバーの数を増やしサーバー全体の処理能力を向上させるという意味)しやすく常に安定した環境でサーバーを運用し、リスクを減らしています」と説明する。

私たちはパソコンやスマートフォンからインターネットに日々アクセスし、動画や広告、決済などのさまざまなウェブサービスを快適に利用している。それを裏側で支えているのが、「ビッグデータ」などと呼ばれる膨大なウェブデータを高速処理する技術だ。そのための通信インフラの一翼を担うのがデータセンターといえる。

「一般的にインターネットで扱うデータが増えるほど、データセンターの電力消費も増える関係にあります。ヤフーは企業の社会的責任として、電力消費によるCO2の排出などの環境負荷を低減する取り組みを継続します」(秋山)

秋山潤

システム統括本部 サイトオペレーション本部 インフラ技術2部 DC運用技術 リーダー

2005年ヤフー株式会社に入社。

インフラを管理するチームでエンジニアとして、サーバーの運用、運用ツールの開発等に従事。

2009年1月よりデータセンター運用業務を専門に行うチーム(現チーム)の立ち上げに参画。

株式会社IDCフロンティアなどデータセンター関係会社と一緒にデータセンターの増床、日々の運用改善などに取り組む。

2015年4月から現チームのリーダーを務め、現在にいたる。

秋山潤の顔写真

佐々木聡

IDCフロンティア カスタマーサービス本部 ファシリティエンジニアリング部

1989年国際デジタル通信(現IDCフロンティア)入社。

ネットワーク担当として主にアジア地域との国際回線開通、伝送設備の構築に従事。

現在は設備管理担当として各データセンターの省エネルギー対策やセキュリティ設備を担当。

※肩書き、部署名は掲載時のものです。

佐々木聡の顔写真

ユニークな建物内部もレポート!
【動画】ヤフーの環境への取り組み ~呼吸するデータセンターとは?~

グッドデザイン賞、福島県建築文化賞特別部門賞、第6回サステナブル建築賞などを受賞している「白河データセンター」。
機能的なデザインや省エネの仕組みから「呼吸するデータセンター」とも呼ばれています。動画では建物内部を公開し、詳細を解説しています。

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