多様性がイノベーションを加速
ヤフーのダイバーシティの取り組み

朴重鎬と杉野明子と本間浩輔の写真

ヤフーは、ライフステージや属性の違いにかかわらず、一人ひとりの「才能と情熱を解き放つ」ため、成長できる機会の提供や制度づくりに取り組む

ヤフーの人事のコアコンセプトとして「才能と情熱を解き放つ」がある。会社は各社員の個性を生かし、社員はその環境で働くことで自己実現し、最終的に会社はイノベーションを遂げて成長に結びつける。つまりイノベーションの源泉は、個々人のさまざまな属性や才能であり、会社はその多様性(ダイバーシティ)を認めて、受け入れることにあるということだ。グローバル採用や障がい者アスリートの雇用を進めるヤフーの取り組みを聞いた。

文=斉藤円華(「オルタナ」編集委員) 写真=福地波宇郎

本間浩輔の写真

ダイバーシティを推進する上級執行役員・コーポレート統括本部長の本間浩輔

「ヤフーがダイバーシティで大きく2つの要素を重視します。まず1つ目は個人の尊重です。一般的に、組織はマジョリティ(多数者)を中心に作られていく傾向にあります。そのことを前提としながら、マイノリティ(少数者)に配慮し、それを表に出していかないといけないのです。」

ヤフーで上級執行役員 コーポレート統括本部長の本間浩輔はこう話す。約6000人もの社員が勤務する同社では、女性の活躍推進だけではなく、外国人や障がい者の採用にも力を入れている。2013年からは新卒の外国人を採用する「グローバル採用」を始め、2015年には「障がい者インターン」も行っている。

ダイバーシティが「集団思考」を是正する

それでは、ダイバーシティにおけるもう一つの要素とは何か。本間は「集団思考に傾きがちな組織のあり方を見直すこと」と強調する。

「集団思考とは、同じような考え方の人が集まって下す意思決定のことです。組織は自然と、同じような傾向の人同士がまとまってしまいがちです。しかし、そのようなチームやグループが下した判断は視点が偏り、正しい方向を向けない時があります。少数者の視点や意見が、集団思考を是正する上で重要です」(本間)

インターネットサービスでは常に激しい競争やイノベーションが起きている。その中でヤフーも技術投資や開発を行い、100以上のサービスを提供し、いくつものプロジェクトが同時並行で進む。これらの事業を成長させ続けるためには、常にイノベーションが求められる。

しかし、組織が集団思考の傾向を強めれば、ヤフーの外で起きているイノベーションの芽に気付かず、見逃してしまう恐れがある。変化の早い事業環境において、こうした傾向は好ましくない。

「マイノリティとは、外国人や障がい者という『属性』の側面のほかに、マジョリティでは括れない『多様な考えの立場』、ということもできます。つまりそうした多様な属性や考え方を認めることが、ダイバーシティの中身です」(本間)

そこでヤフーが採用活動とあわせて重要視しているのが、ダイバーシティへの取り組みを社員に啓発していくことだ。

「社内にどのようなマイノリティの人が実際に働いているのか。そのことを知ることで、お互いが一緒に働きやすくなります。例えば、外国人や障がい者といった人とどう接するべきなのかを知ることは、ダイバーシティにとって非常に大切です。社内向けの広報活動や、社員もよく見ている公式ブログを通じて、外国人や障がい者が職場で活躍する様子についても紹介しています」(本間)

朴重鎬の写真

メディアカンパニー検索事業本部サーチテクノロジー部 部長の朴重鎬。グローバル採用の部下を多数マネジメント

ダイバーシティの幅を広げる

「会議で言いたいことがあるのに『場を壊すかもしれない』と遠慮して言わない、という雰囲気も、集団思考を生み出す素地となります。そうならないよう、社員の表情を察して話すきっかけを作ったりするようにしています」。こう話すのは、ヤフー メディアカンパニー 検索事業本部 サーチテクノロジー部長の朴重鎬だ。

朴は「異なる意見にも耳を傾ける方が、良いプロジェクトができます」と言う。その朴の部下には、グローバル採用で入社したメンバーがいる。優秀な能力を持つ多国籍の社員から刺激を受けているという。

「2015年秋にヤフー台湾と協力して、エンジニアチームが即興で開発したサービスやアプリを競い合う『Hack Day(ハックデー)』を開催したところ、入社2カ月のインド国籍の社員が参加したチームがいきなり優勝しました。グローバル採用は日本語教育が必要ですが、インドの若者の優秀な才能やモチベーションに触発されることも多く、メリットは大きいです」(朴)

さらに朴は「ダイバーシティは日本社会にもありますが、日本という国の中に収まってもいます。異なる考え方の中で育った海外出身の人に触れることで、ダイバーシティの幅が広がります。海外の代表的なIT大手の企業では、当たり前に多国籍の社員が働いている。幅広いダイバーシティの中から、素晴らしいサービスや製品が登場しています」と続ける。

杉野明子の写真

パラバドミントンの日本代表を目指す財務統括本部購買本部の杉野明子

東京パラリンピックで頂点を目指す

財務統括本部購買本部の杉野明子は、2020年の東京パラリンピックで正式種目となったパラバドミントン(障がい者バドミントン)の女子日本代表を目指している。

「世界の頂点という夢を目指して、全力でパラバドミントンに打ち込んでいます。メンタル要素が重要な競技なので、そこで培った集中力がデスクワークでも活きています」(杉野)

杉野は競技から引退した後もヤフーで働き続けることができる。「競技引退後について、今から考えることはできませんが、ヤフーで約3年間身に付けた業務経験やスキルを引き続き伸ばしながら、競技に取り組むことができます。また自ら手を挙げて異動ができる制度もあり、将来のキャリアを柔軟に考えられる環境だと感じます」(杉野)。

本間は障がい者アスリートを支援する意義をこう語った。「世界の大舞台に立ちたいという素晴らしい夢を持つ人を、会社として応援するのは当然のことと考えています。杉野のチャレンジは、会社と個人が良いパートナーシップを築くための先行事例であり、全ての社員に通じるテーマといえます」。

東京パラリンピックに向けてヤフーは、新たに障がい者アスリート4名を採用。練習や競技でフルタイムの勤務が困難な場合は、短時間勤務も可能だ。

「人は働くために生きているのではなくて、人生を充実させる手段の一つとして仕事があります。夢を諦めて不満を抱えたまま仕事をしても、そこに良いパフォーマンスは期待できません。そして企業は、利益を上げた対価を社員に支払う。そういう企業風土を作っていかないと、企業は厳しい競争の中で生き残っていけないと考えています」(本間)

本間浩輔

上級執行役員 コーポレート統括本部長

2000年に株式会社野村総合研究所を退職後、株式会社スポーツ・ナビゲーション(現ワイズ・スポーツ)の創業に参画。

2002年に同社をヤフーが買収したため、ヤフーグループ入り。

2012年4月、人事本部長に就任。

2014年4月、執行役員 ピープル・デベロップメント統括本部長。

2016年4月から現職。

本間浩輔の顔写真

朴重鎬

メディアカンパニー 検索事業本部 サーチテクノロジー部長

2007年に検索エンジニアとして入社。

2014年4月から「Yahoo!検索」のプラットフォーム開発とデータサイエンス領域を担う検索開発の部長職に。海外現地で行われる「グローバル採用」の面接にも同席して、優秀なエンジニア採用にも携わる。

朴重鎬の顔写真

杉野明子

財務統括本部 購買本部 購買部

2013年に新卒入社。

現在、購買本部購買チーム所属。

2014年 仁川アジアパラ競技大会で女子ダブルス銅メダル、女子シングルスベスト8入賞。

2015年 2nd INDONESIA PARA-BADMINTON INTERNATIONAL 2015で女子ダブルス銅メダル、女子シングルス銀メダル。

※肩書き、部署名は掲載時のものです。

杉野明子の顔写真

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